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2012年6月17日日曜日

Salome at the Tokyo New National Theater (サロメ - 新国立劇場) 雑感

光文社古典新訳文庫の装丁と、中に刻まれた活字の大きさと読みやすさが好きで、これまで何10冊か読んでお世話になってきていたのですが、この「サロメ」。本をパラパラめくると数10ページで終わってしまう物語の本編よりも、訳者の後書きや解説の方が濃ゆくなっていました。この訳本作成のために、並々ならぬ翻訳者たちの情熱を感じ、本の帯についていた鑑賞抽選応募券を送ったら、何故か新国立劇場での演劇に招待されてしまいました。東京に住んで数年。新国立劇場がどこにあるのかも知らない状態だったのですが、京王新線の初台駅まで行きまして鑑賞して参りました。
一応「光文社古典新訳文庫版」と、新訳文庫版訳者である平野啓一郎氏が影響を受けたという「岩波文庫版」を読んでからの鑑賞です。

このような劇場で演劇を見たのは初めてだったので、評価も感想も素人的なことしか申し上げられませんが、あっという間の100分でした。平野氏や宮本亜門氏らのいうところの[新しいサロメ像を生み出す]という目標はこの上なく上手く達成されていたのではないかと思います。
点滴その他の麻酔手技で難渋することしばしばの私なんかにしてみると、役者さんたちが台詞を一切間違えないということだけでも凄いと思うのですが、言葉や表情、動きに魂込めて観客を物語にのめり込ませ、感情移入させ引きずり込ませるためにはそれだけでは全然足りないのだと思います。 劇中の台詞は「新訳文庫版」のものをほぼ踏襲していたと思いますが、おんなじセリフでも自分の頭で黙読して得るものと、役者さんそれぞれが解釈、咀嚼して吐き出す台詞の数々から得るもの、全く違うものになりました。違う国、それも100年以上前の異国で生みだされた物語を演じているのに全く違和感がないです。プロフェッショナルってこういうものをいうのでしょうか?皆さん素晴らしかったですが、ヘロデ役の麻実れい氏の存在感は突出しており、舞台に登場し一声発するなり引きこまれてしまいました。
全く異業種ながら驚嘆の連続でした。想像できないほどの努力が裏にあったのだと思います。自分の仕事や研究への姿勢を振り返るいいきっかけになりました。
帰り道の図書館でR・シュトラウスの歌劇[サロメ]を発見したのでそちらもチャレンジしてみたいと思います。
(これは開演前の中劇場です。実際は満員でした)