その立場ですが、手術麻酔の勤務先は三次救急を受け入れている非常に忙しい病院ですので、当然ながら熱意のある初期研修医の先生方が沢山集まり、麻酔科にも定期的に研修にいらっしゃいます。
私は一列の麻酔を麻酔担当医として担当する立場ですので、手術中は他の部屋に行くことも出来ず、また行く必要もなく、只々自分が担当する患者さんの手術が安全に行われているかを絶え間なく監視するだけです。大出血などのイベントがなければ、麻酔科医は私一人だけいればいいのです。
そのようなところに、初期研修医の先生が一緒に麻酔を担当するように麻酔の予定が組まれていることがあります。
名前も顔もよく分からない初期研修医の先生(若い先生)と一緒に麻酔を導入するのは、まあいいのです。
ですが、一通り落ち着いて一緒に麻酔を維持するのは非常に苦痛です。
私は最近、「なぜ私がそれを苦痛と思うのか」についてちょっと離れた場所から考察していたので、その考察(仮説)を幾つかここで提示してみたいと思います。
1.私と病院との業務契約に、初期研修医の指導をすることが含まれていない。もし初期研修医を指導するのであれば契約料金に追加料金をいただきたいと、心のどこかで思っている。
2.初期研修医と一緒に全身麻酔の導入をすると、大抵の場合、自分ひとりで麻酔導入するよりも時間が余計にかかる。私は手術麻酔をするということでこの病院に来ている以上、自分が担当する手術麻酔は一刻も早く麻酔を完了して、一刻も早く執刀してしていただきたい。なのに若い先生に色々とやってもらうので、その目的が達成できない。
3.全身麻酔の維持中に若い先生と話すことがない。それは私が、その人に対して興味がないからかもしれません。興味がないから「どこの出身なの、とか、何科に行こうと思っているの」とか聞く気が起きません。そもそも、場をもたせようとか色々な理由で雑談をする気になれません。手術をしている先生方のノイズになりたくないからです。手術に本当に集中している先生であれば、私の雑談など耳に入らないかと思いますが、こうひきをしなくてもいいような第二助手の先生あたりの耳に私の声が入り「あー、麻酔科医は暇でいいよな」とか思われるのも癪に障るからです。
3を書いている最中にふと思い出しましたが、以前大学病院で働いていた頃は、こんな感情で苦しんだことはありませんでした。
それはなぜでしょう。
思い当たるのは1つ。それは自分が直接に責任をもつ手術麻酔症例が複数あったからです(所謂鵜飼麻酔をしていたからです。今はそのような表現をするのか分かりませんが)。自分が責任を持って担当する手術麻酔が複数あれば、それぞれの手術の進行を頭の中で考え、それぞれの手術室にいる研修医に必要なタイミングで必要な指示を出す必要があるため、一生懸命自分の頭を使うのです。そのため、それぞれの手術室にいる研修医の表情なり麻酔への集中具合を見て、必要なことを必要なだけコミュニケーションをし、また次の部屋に行くのでした。
非常勤医として手術麻酔を担当している今、複数の手術の麻酔管理を担当することがないため、はっきり言って手持ち無沙汰なのです。
それが苦痛なのか。私はなんと贅沢なことを言っているのか。
私ももっと一生懸命やりたいと思います。それが今日の教訓。
せめてもうちょっと積極的に質問してくれればなぁ、と思うけれど、質問をしてくれないような雰囲気を私が作っているのかもしれない。何がなんだかよく分からない。