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2019年2月17日日曜日

「福岡市を経営する」を読む、慢性疼痛学会に参加する、ケタミンは開胸術後慢性痛を減らさない

久しぶりに一冊全部読みました。

36歳で福岡市長になって現在三期目を務めていらっしゃる高島宗一郎氏による著作です。
36歳で市長になるってこと自体、驚愕ですが、自分で道を切り開いて目に見える成果を出しているところがまた驚愕です。

以下メモ。

なげやりと思われるかもしれませんが、これは決して「なるようになるさ」という行き当たりばったりのような意味ではありません。どうぞ私の命をこの世の中のために使ってください、という感覚なのです。私の居場所はどこでもいい。私に役割があるのであれば、運命がその役割に私を配置するでしょう。その置かれた場所で、全力を尽くすのみです。p74

だから、明日死ぬかのように今日を生きる。p75

ただ技をかければいい、ただギブアップが取れればいい、ということだけでなく、痛みや喜び、苦しみ、葛藤といった感情が伝わるレスラーこそが一流なのです。さらに「人生」まで伝えることができるレスラーは超一流です。p81

街を変えるには「よそ者、若者、バカ者」という3要素が必要と言われます。私は見事にすべてに当てはまります。p169

上の世代は、自分たちで道を切り開き、今の日本の繁栄をつくりました。心からリスペクトしています。私たちの時代も、繁栄を誰かが運んできてくれるわけではありません。自らの時代は自らで闘って勝ち取るもので、相続を期待するものではないのです。p201

チャンスはいつやってくるのかわかりません。それでも、いつそのときが来てもいいように緊張感をもって準備をしておくことが大切です。p248

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第48回慢性疼痛学会(岐阜市)に行ってきました。久しぶりに一般演題で発表の機会をいただきました。会場の岐阜市まで、実に7時間かかりました。

行かせていただいた成果としては、2日間缶詰で以下の項目について、シンポジウムや教育講演、セミナーを受講できました。発表者の真摯な思いが伝わってくるものばかりでした。

・慢性痛はゼロを目指すべきか
・頭痛(一般演題)
・脊椎脊髄疾患術後遺残症状(痛み・しびれ)のメカニズムと対策
・パーキンソン病の姿勢・腰痛・手術
・周術期疼痛管理におけるtransitional pain serviceの役割
・痛みの構造で考えるオピオイドの選択
・臨床研究法を視野に入れたビッグデータ解析
・タペンタドール
・薬物依存
・がん患者の非癌性疼痛や慢性疼痛のオピオイド
・FBSS(failed back surgery syndrome)に対するインターベンショナル治療
・ガバペンチノイド(ミロガバリン)の可能性と課題
・腎機能障害時の薬物選択と運動器疼痛の治療効果判定
を聴講しました。

また、学会の後に行われた第4回日本ペインクリニック・インターベンショナル治療研究会にも参加し、他施設の治療経験や経皮的椎間板治療について知ることができました。

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上記学会に行くちょっと前に読んだ論文。

Ketamine infusion for 96 hr after thoracotomy: Effects on acute and persistent pain (Eur J Pain. 2019 Feb 4. doi: 10.1002/ejp.1366. [Epub ahead of print] PMID: 30719817)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30719817

開胸術は術後慢性痛の頻度が高いものの一つとされています。この論文では、NMDA受容体拮抗薬であるケタミンが、そのような痛みの頻度を減らすか、について検証しています。プロトコルとしてはケタミン0.1mg/kgボーラスした後に、0.1mg/kg/hを術開始10分前から96時間投与し生食持続投与群と比較した前向き二重盲検試験です。結果、ケタミン投与群は、術直後のオピオイド使用量を有意に減らしましたが、手術後6週間〜12ヶ月の痛みを低下させることはなかった。ということです。

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この2−3日は、自分の中にパッションがたくさんあることを再認識することができる貴重な期間となりました。支えてくれた皆さんに心より感謝いたします。