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2012年2月18日土曜日

(麻) どきどき抜き打ちナイトメア

麻酔のアルバイトは恐ろしい。っていうか何科のアルバイトでも怖いと思うんですが。
以下、ちょこっと昔の話です。

***
開腹術。腹膜縫うところまでレミフェンタニル0.5γで投与してたとは思えないほど、早く目覚めたんですよ。80歳台後半の男性。
硬膜外麻酔は凝固異常のために出来なかったけど、フェンタニル十分量投与して、目覚めて大丈夫そうなら抜管して病棟にお帰りいただこう・・・と。
麻酔をきって数分で眼をぱちくりさせてる患者さん。まだ気管チューブは挿入されたまま。
自発呼吸できるように人工呼吸器回路を開放して、患者さんの呼吸を待ってみました。
うーん。麻薬のせいかな、ちょっと補助換気してみよっと。
・・・。

バッグが揉めない。
・・・。

全然酸素が入って行かないんですよ。患者さんの肺に。
50cmH2Oで40mlくらい。その時はこっちの換気のタイミングと患者さんの自発呼吸が喧嘩して上手く換気できないのかな・・・くらいにしか思ってなかったんですが。
みるみるSpO2が下がっていく。

んー?ブロンコスパスム??
と思って聴診。

・・・してもバッグが硬すぎて、酸素が入って行かないんだから、なんにも聞こえるわけない。
やっぱ気管支攣縮だ…。
てことはアナフィラキシーか喘息発作?
しかし血圧は170もあるし、皮膚は・・・顔はちょっと赤くて浮腫んでるけど、もとから赤ら顔のお爺さまだったような気もするし。いや、アナフィラキシーだけどまだ循環虚脱してないだけか?いずれにせよ喘息だ。治療せな。
んーと、あれあれ、βの。なんだっけ。・・・ないの?
看護師さん「ないっす」
えー?あーじゃぁアドレナリンだ!でも血圧高すぎだしペースメーカーはいってるし、心不全の既往あるし、これ以上血圧上がったらまずいかも。ちょっと使えないよな。
んーじゃぁステロイドとテオフィリン。あーセボフルランも使えるじゃないか!・・・患者さん、申し訳ありません、ちょっとお休み下さいね・・・。
そうこうしているうちにちょっとずつ換気できるようになってカプノメータも表示されるように・・・ETCO2が・・・あらら高すぎ。脳外科の手術じゃなくてよかった…ってこともないか。

***
結局上記何かの薬の影響で気管支攣縮が解除されたので、挿管のまま一晩ICUにお帰りいただき、その後大丈夫な経過だったのですが。

喘息ではありませんが、

こちらの鑑定意見書

に身につまされることが記載されていました。

「失敗しないために最も効果的な方法は失敗してみることである:The only way to avoid mistakes is to gain experience. The only way to gain experience is to make a mistake.」

麻酔科医になって数年、気道系の重篤なトラブルに見舞われることがなかったのはラッキーとしか思えない。リバーシブルな失敗(失敗といっていいのか疑問だけど)を糧にして同じ轍だけは踏まないようにしないと。日々何かを学ぶことができる仕事って幸せな仕事だ、って言いたいけど、あんまりドキドキしたくない。