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2012年2月24日金曜日

(音) 絶品バラード~Orphaned LandのRoad to Or Shalem (2011年, Israel) より

メタルを主食として音楽を聴いていると「結局どのバンドが1番好きなのか」と聞かれて答えに窮する自分がいます。そんな時に…あぁなんだ、このバンドがいたじゃないか、とほっと胸を撫で下ろす存在なのがイスラエルのバンド、Orphaned Land。

大体私はライブアルバムやライブDVDといったアイテムコレクションには殆ど興味がない人間なのですが(スタジオアルバムのCDですら、レンタルでも何でも聴けさえすればいいと思っている)、本作の購入は、その存在を知った時点でほぼ即決。というその行動が、このバンドの音楽を愛しているっていう何よりの証拠だと思います。

本作ライブの演奏がスタジオアルバムのそれと遜色ないのは勿論高評価。しかしそれ以上に選曲がよい。とてもよい。ベストアルバムといってもいい。これでDVD2枚とライブの大部分の曲が収録されてるCDが入って2000円ってどういうことなんでしょう。

CDには「The Warrior」以外の私の好きな曲がほとんどすべて入ってる(DVDにはThe Warriorも収録されているけど)。何せ内省バラードな「M I?」も入ってるのである。


しかしやっぱり何百回聴いても至高のバラードなのが「New Jerusalem」。



5時間予定の手術が倍かかったって構いませんよ。これが聴けるんだったら。

2012年2月18日土曜日

(雑) 236日ぶりの歯科受診

私は「虫歯恐怖症」です。
まさか、自覚症状もないのに歯科を予約してチェックしてもらうようになるとは。

新しい虫歯はありませんでした。取り敢えず、8ヶ月ほどの間に蓄積した歯石や茶渋などを数十分かけて落としてもらう。処置の最中に睡魔が襲ってきて何度も「口をしっかり開けてくださいね~」と言われてしまった。もうちょっと痛ければ起きてるんだけど、痛くないから眠ってしまいますよ。

酸蝕症(erosion)というのに気をつけた方がいいと言われた。
文字通り酸でエナメル質が溶けるらしい。
コーラはPH2.2と強酸性、その他、柑橘系果物や、栄養ドリンクも強酸。黒酢もpH 3.1と油断できない。スポーツ飲料も3.5と酸性だ。
歯を守るためにはそれらの摂取を減らすのは勿論だが、摂取した後も水でうがいしたりすると良いらしい。コーラで歯が溶ける、ってのは本当だったんだね。

痛くなってから知っても時、既に遅し、だろうから、いいことを教えてもらいました。年をとってから歯のことで悩みたくないし、無駄なお金を使いたくないから今のうちにできることをしておこうと思う。

(麻) どきどき抜き打ちナイトメア

麻酔のアルバイトは恐ろしい。っていうか何科のアルバイトでも怖いと思うんですが。
以下、ちょこっと昔の話です。

***
開腹術。腹膜縫うところまでレミフェンタニル0.5γで投与してたとは思えないほど、早く目覚めたんですよ。80歳台後半の男性。
硬膜外麻酔は凝固異常のために出来なかったけど、フェンタニル十分量投与して、目覚めて大丈夫そうなら抜管して病棟にお帰りいただこう・・・と。
麻酔をきって数分で眼をぱちくりさせてる患者さん。まだ気管チューブは挿入されたまま。
自発呼吸できるように人工呼吸器回路を開放して、患者さんの呼吸を待ってみました。
うーん。麻薬のせいかな、ちょっと補助換気してみよっと。
・・・。

バッグが揉めない。
・・・。

全然酸素が入って行かないんですよ。患者さんの肺に。
50cmH2Oで40mlくらい。その時はこっちの換気のタイミングと患者さんの自発呼吸が喧嘩して上手く換気できないのかな・・・くらいにしか思ってなかったんですが。
みるみるSpO2が下がっていく。

んー?ブロンコスパスム??
と思って聴診。

・・・してもバッグが硬すぎて、酸素が入って行かないんだから、なんにも聞こえるわけない。
やっぱ気管支攣縮だ…。
てことはアナフィラキシーか喘息発作?
しかし血圧は170もあるし、皮膚は・・・顔はちょっと赤くて浮腫んでるけど、もとから赤ら顔のお爺さまだったような気もするし。いや、アナフィラキシーだけどまだ循環虚脱してないだけか?いずれにせよ喘息だ。治療せな。
んーと、あれあれ、βの。なんだっけ。・・・ないの?
看護師さん「ないっす」
えー?あーじゃぁアドレナリンだ!でも血圧高すぎだしペースメーカーはいってるし、心不全の既往あるし、これ以上血圧上がったらまずいかも。ちょっと使えないよな。
んーじゃぁステロイドとテオフィリン。あーセボフルランも使えるじゃないか!・・・患者さん、申し訳ありません、ちょっとお休み下さいね・・・。
そうこうしているうちにちょっとずつ換気できるようになってカプノメータも表示されるように・・・ETCO2が・・・あらら高すぎ。脳外科の手術じゃなくてよかった…ってこともないか。

***
結局上記何かの薬の影響で気管支攣縮が解除されたので、挿管のまま一晩ICUにお帰りいただき、その後大丈夫な経過だったのですが。

喘息ではありませんが、

こちらの鑑定意見書

に身につまされることが記載されていました。

「失敗しないために最も効果的な方法は失敗してみることである:The only way to avoid mistakes is to gain experience. The only way to gain experience is to make a mistake.」

麻酔科医になって数年、気道系の重篤なトラブルに見舞われることがなかったのはラッキーとしか思えない。リバーシブルな失敗(失敗といっていいのか疑問だけど)を糧にして同じ轍だけは踏まないようにしないと。日々何かを学ぶことができる仕事って幸せな仕事だ、って言いたいけど、あんまりドキドキしたくない。

2012年2月16日木曜日

(麻) 久しぶりに抄読会準備

8割がた終了。後は喋りの予行練習何回かと突っ込まれそうなところの知識武装かな。半月後に自分の当番が回ってくるのですが、日本語でよいので少し気が楽…。

抄読会の参考に読んだ本

地味な装丁だったので今まで本棚に置いてあるばかりだったけど、なんとまぁ、良書でした。この分野って自分にはとっつきにくいのですが、その機序から臨床実践まで多くのevidenceとともにわかりやすく書かれております。今さらながらおすすめ…っていうかよく読んでちゃんと勉強しよっと。

2012年2月8日水曜日

(雑) 人間だもの。

麻酔科医になった。
その1番の理由は手術室で内科医になりたかったから。
どんなに侵襲の強い、手術自体が患者さんを死に至らしめる可能性があったとしても、そのpainを少しでも和らげることができれば。
自分にどんな力があるかも、何も出来ないかもしれないけど。そう思って、麻酔科医であることを生涯のライフワークにしようと思った。

それがおよそ6年前の、初期レジデントだった時の、私の思い。

今はどうだろう。
Perioperative intensive physicianとしての私。
それは殆ど理想とするレベルから見れば、奈落の底のような状態かもしれない。

恐らく今のように大学院で基礎研究をするよりも、産科麻酔、小児麻酔、心臓外科麻酔、集中治療室、末梢神経ブロック、ペインクリニック、et al。
そういった環境で徹底的に集中して、何らかの「目に見えて即、病める人たちのお役に立てるような」研修を積んだ方がよかったのかもしれない。いや、間違いなくそうだろう。
という葛藤がありつつも、大学院で研究しようと思ったのは、この人生における巡り合わせ、周りにいらっしゃる様々な方々とのご縁、そしてもう、この機会を逃したら、この人生において研究というものに全く触れられなくなってしまうという、第三者的には理解しづらいかもしれない得体のしれない焦燥感。
そういったものが、今日の私を作っている。

それでいいんじゃないかと思う。
何でもかんでもはできない。これは諦観ではなく、本当に。少なくとも私の能力では。いろんなものの本質めいたものに気づくのに、いつも遅すぎる私にとっては。

だとしたらそういう、自分の人生で諦めたことは、もっと得意でそれが好きな方々にお任せしたいと思う。そして、そういう先達に、自分が幾つになっても教えを請えたらいいと思う。
まだ31年しか生きてないけど、そして生涯現役で働かないと野たれ死ぬかもしれないこの時代に生きている私の今現在の思うこと。

***
やっぱり何百回聴いても名曲ですね。伊藤君子さんの「follow me」

2012年2月3日金曜日

(音) メタル耳にはビートルズが新鮮だった、という話


曲がりなりにも洋楽を主食としている私としては、ビートルズくらい全部聞いとかなきゃ!とか全く思わないのですが、アルバイト先の手術室。研修医の先生との会話。

音楽聞かないの?なにが好き?洋楽聞く?
―そうですねー。いろいろ。
じゃぁQueenは?
―好きですよ。
どの曲が好きなの?
―ベストアルバムの1曲目とかいいんじゃないですかね。

がーん。
それってボヘミアン・ラプソディのことですよね??

いや、ボヘミアン・ラプソディは私も好きだし、すんごく有名(だってQueenは世界で最も売れたアーティストランキング第5位 by wikipedia)だし、あれを嫌いっていう人ってあんまりいないと思うんだけど、さ・・・。もしかしたら私に気を使ってくれたのかもしれないけれど、Queenが好き、って言うんだったら、もうちょっとマニアックな答えを期待してしまうのは、私の身勝手でしょうか?(Queenについて教えを請いたかったのに)
そんな研修医の先生のお気に入りだと教えてくれたのが、世界一売っているアーティスト、ビートルズの「Revolver」(1966年, 7枚目のスタジオアルバム)。

これまで恥ずかしながらビートルズはベストアルバムと12作目のオリジナルアルバム「Let It Be」しか聴いたことがなかったので、早速手にとって見ました。んで、気に入ったのが上のEleanor Rigby。ビートルズファンには今更かよ、でしょうけど。
ありがとう、M先生。こうなると他の10枚のオリジナルアルバムも聞かないといけない気分になって来ました。

それに続く"I'm only sleeping"も好き。

Please don't wake me, no
don't shake me
Leave me where I am
I'm only sleeping
と歌っている。
ということで、当直はゆっくり眠らせて下さい。

2012年2月2日木曜日

(麻) 雪國再訪と局麻中毒時のlipid rescue

麻酔科学会の事前参加登録が始まっているので、久しぶりにDaturaに入ると「2011 年度第50 回麻酔科専門医認定試験 講評」が掲載されていました。
要約すると・・・基本的な問題ばっかりだったんだから、もっとがんばれよ、って書いてるように読めます。厳しいなぁ。

***
ということで大雪警報の出ていた昨日、再度雪國へ麻酔をしに行って参りました。県境を越えたあたりから車窓の外は白一色でしたが、新幹線は完全に予定通りの運行時間で到着。凄すぎます。
聞いてみると、私が到着する前の3時間ほどで10cmくらい雪が積もったとのこと。幹線道路はかろうじて除雪されていましたが、その他の道は完全に雪道。雪國でも結構苦戦している様子でした。
駅からバスに乗ろうと・・・待てども待てども来ない・・・でも、来たとしても普段の2-3倍の時間はかかるだろうと踏んで、結局、病院まではタクシーを使ってしまいました。タクシーの運転手さんも雪道だとノロノロ運転で大して儲からないんだよ、と嘆いておりました。

こちらの病院にお世話になるのは2回目でしたが、外科の先生や看護師さんへの気の遣い方がわかってきたので、随分楽に仕事ができました。

オペ室でエフェドリン吸ってる時に、流れてきたのはJourneyのOpen Arms。
久しぶりに聴いたけどやっぱりいい曲。聴いたのは、ヴォーカルなしのピアノ版インストでしたが。

***
The Anesthesia Blog にありましたので、復習。専門医試験にも出題されてました。

20% Intralipid:
1.Administer 1.5 mL/kg as an initial bolus; the bolus can be repeated 1- 2 times for persistent asystole.
2.Start an infusion at 0.25 mL/kg/min for 30-60 minutes; increase infusion rate up to 0.50 mL/kg/min for refractory hypotension.

大体、大人(60kgとして)なら初回100mlボーラス、心静止続くなら1-2回ボーラスをリピート。15ml/minの速さで30分か1時間。治療に反応しない低血圧に30ml/minまで増量ってところでしょうか。10%イントラリピッドなら2倍量に。

以下2/28追記。
Anesthesiology - Issue: Volume 115(6), December 2011, p 1219–1228
Lipid Resuscitation of Bupivacaine Toxicity: Long-chain Triglyceride Emulsion Provides Benefits over Long- and Medium-chain Triglyceride Emulsion
によれば中/長鎖脂肪酸製剤より長鎖脂肪酸製剤のほうが心拍再開後の再心停止率は低いようですね。今のところ日本では長鎖脂肪酸製剤しか使えないようですが。このラットのモデルでは、数十分後に再度心停止をきたしているケースもあるようですから、ヒトにおいても心拍再開後の持続投与って重要なのかな。拡大解釈かもしれませんが、脂肪酸製剤の半減期を考えると使ったほうがいいんでしょうね、きっと。脂肪酸製剤は肝代謝だから、肝硬変患者さんだったら持続する必要がないのかも。全部推測ですが。

The exact mechanism of lipid rescue remains unclear. Currently, the most favored theoretical mechanism is the “lipid sink” theory, in which the lipophilic local anesthetics are bound by lipid, thus reducing tissue content of the toxin. An alternative mechanism is the “lipid flux” theory, whereby lipid emulsions supply the mitochondria with sufficient substrate to enable energy production, which counters the impaired fatty acid delivery caused by local anesthetics.

この論文の結果はlipid sink theoryをより裏付ける結果だったようです。