オリジナリティなんてものはありません。いつもどおりやるだけです。しかし、そのいつも通りが大変難しい。特に初めて行く病院の手術室では。恐らく何科のドクターでもそうなのでしょうが、麻酔科医である私も気を遣います。
いきなり行って、初対面の患者さんに針さして、麻酔薬で呼吸を止めて(勿論人工呼吸器で換気しますが)、麻酔薬で寝てる間に劇薬や毒薬(に指定されている薬)を投与しまくったり、輸液を何リットルもするわけです。その一方で自分も寝てしまわないように頑張るという、ちょっと異常な仕事です。
という訳で、初めての(そしてもしかすると最後の)病院で働いてきました。新幹線に乗って麻酔をかけにいくのは生まれて初めてです。新幹線なんて使って贅沢しやがって、って言わないで下さい。在来線だけで行ったら移動だけで往復10時間以上かかります。そういう距離にある病院です。
麻酔器をチェックする前に、除細動器とアンビューバッグとダントロレンの場所を確認します。後はアドレナリンとノルアドレナリンとステロイドと挿管困難グッズ。
麻酔科医がいない病院では誰も助けてくれないと思わなければいけません。
んで麻酔…。
薬剤を投与する度にアナフィラキシーショックが起こらないよう祈り、悪性高熱症が発症しないように祈り、肺塞栓が起こらないように祈り、心筋梗塞や脳梗塞が起こらないように祈り、初めて一緒に仕事をする外科医や看護師さんに怒られやしないか祈り(皆さん優しい方ばかりでしたが)。
まぁ祈ってばかりの祈祷師みたいな仕事でした。
まぁ何事も無く終了したんですが・・・マネージメントしてくださった先生方に感謝申し上げます。家から遠く離れても、意外に麻酔に集中できるもんなんだな。そんな1763件目の麻酔担当症例でした。